サラウンドの名称とその違い


 初心者の方がまず躓いて悩むのは、プレーヤーとAVアンプの家庭用サラウンド規格についての記述だと思います。カタログには「ドルビー・プロロジック」だぁ「ドルビー・デジタル」だぁ「dts」だぁと、映画館で見覚えはあるけれど、その実ワケの分からない言葉が並び、その上『アナログ入力端子により5.1Ch 対応』とか『デジタル出力によりDTS対応』などと、俺の頭にも対応しろと言いたくなる微妙な言い回しが多いですからねぇ。
 これに「DSP」、「THX」、「RFデモジュレーター」なんて単語が絡んでくると、普通の人が「やはりAVはムズい」と投げ出してしまうのも無理はありません。

家庭用サラウンド規格について

 劇場でのサラウンド感を家庭で再現する為の規格。
 これらは劇場版と名称は同じですが、内容は別物で、映画音響技術専門の団体(有名なのはドルビー研究所)が、ビデオの普及に伴い制定したものです。

 一般の方が一番多く目にするのは、「ドルビー・サラウンド」と呼ばれるもので、音の位相を利用し、ステレオ2Chでも音の拡がりが得られる様に考えられています。

 これをアンプ側の回路でより強調・分離した技術規格が『ドルビー・プロロジック』です。現在発売中のAVアンプに、ビデオの音声や「ドルビー・デジタル」、「dts」以外のLD/DVDソフトを入力した場合は、(モノラル・ソースを除き)この『ドルビー・プロロジック』による再生になります。
つまり、レンタルビデオなどをステレオTVのみや2つのスピーカーでスルーに聴いた場合は「ドルビー・サラウンド」、3つ以上の複数スピーカー(最大でヤマハのみ7.1、他は5.1)で聴く場合は『ドルビー・プロロジック』というワケです。
(AVアンプでのステレオ再生の場合はプロロジック回路を経由するのが一般的で、スルーで聴くよりもセリフやサラウンド感が強調されます。また、一部の「ドルビー・デジタル」にはモノラルやステレオのものもあるのですが、これは次で触れましょう)


Dolby Digital  ドルビー研究所が、1991年に劇場版ドルビー・サラウンド(4Chの多重音声をマトリックス・ステレオにリミックスして映画フィルムに2Chアナログ磁気記録した方式。75年開発の「Aタイプ」と86年に開発されたAタイプの改善版「ドルビーSR」がある)の音質改善策として発表した新たな方式が、デジタル信号による多重 5.1チャンネル音声を 圧縮した上でフィルムに記録する『ドルビー・デジタル』です。これにより劇場の音響は飛躍的に向上し、サラウンド・チャンネルがステレオ化されたことで臨場感も桁外れに高まりました。
 そのコンシューマー向けの規格が、パッケージ・ソフトの代表的音声規格になりつつある『ドルビー・デジタル』です。

 プロロジックが2チャンネルをギミック的に疑似多チャンネル化したものに過ぎないのに比べ、ドルデジは始めから5.1 Chで記録されているので、よりサウンド・デザイナーの意図を明確に読み取ることが可能になりました。
(先ほどから書いてきた5.1という呼称の意味ですが、5というのは、L、R、C(センター)、サラウンドL、サラウンドRの各チャンネルを指し、残りの0.1は5チャンネルにマタガる重低音を再生するサブ・ウーハーを指しています)

 尚、クラシック・ムービーなどのモノラル音声や、ドルビー・サラウンドや それ以外のステレオ・ソースでも、ドルビーの規格に従いデジタルでリマスターされている場合は『ドルビー・デジタル』と呼ばれます。


dts  1993年公開の超話題作「ジュラシック・パーク」で、世界中の映画館の音響規格を独占するかに思えたドルビー帝国に、敢然と闘いを挑んだ会社が現れました。
「デジタル・シアター・システムズ」、 『dts』です。

 DTSはフィルムに記憶させる為、多少、音域を狭めた上でデータ圧縮しているドルデジの弱点を突く形で、サウンド・ステージで5.1Ch にミックス・ダウンした時のクォリテイをそっくりそのままCD−ROMとして記録し、上映時にフィルムとシンクロさせると云う、「コロンブスの卵」的発想の規格を提唱し、映像音響の更なる高音質化を大々的にアピールしました。

 しかも、シアター用デコーダー・システムの導入金額をドルデジより低設定にした為、ドルビー帝国の牙城を崩せるのは、今やdtsの他にはないと云われる状況であります。

 そして、両者の闘いは家庭用のサラウンド規格にも飛び火しました。まだまだ多勢に無勢ですが、マニアの支持はdtsに傾きつつあります。99年の春、アメリカでもdtsLDに続いて、dtsDVDが発売されてから、2層記録による 高音質・高画質ぶりに注目が集まっています。

 家庭用規格のドルデジもdtsも、圧縮デジタル信号によるディスクリート 5.1チャンネルでソフト収録されている点は同じなのですが、その圧縮方式が大きく異なっています。

 少し専門的な説明になってしまいますが、LD/DVD共、ドルビー・デジタルが384/448kbpsなのに対し、DTSはその3倍以上の1411/1536kbpsものデータ量を持っているのです。
 この為LDの場合は、アナログ音声トラックの右チャンネル領域で収まっていたドルデジに比べ、DTS信号はEMFデジタル音声のLRを外して記録されています。(だからDTS−LDには普通のデジタル音声がありません)

 同様にDTS−DVDの場合は、1層記録では映像のデータ量が食われてしまうので、必然的に2層による記録になっています。こうなると逆に全体の記録容量に余裕が出て、映像にも多くのビット数が割り振れますので、ドルデジ盤よりdts盤の方が高画質なソフトが多くなる可能性が高いと見られています。(しかし、最近はDD版の2層記録盤も増えて来ています。それにDD盤は、特典映像などを付けて、DTS盤に対抗するパターンが一般的になりました)

 生産効率の悪いヴィデオ・ソフトに替わる、次世代ソフトとして、ハリウッドのメジャー映画会社によって推進されたDVD−VIDEOですが、今の普及率の伸びから考えて、近い将来にパッケージ・ソフトの中核をなすことは疑いなく、DVD音声規格のシェアがどの様になるか、当事者は勿論のことですが、我々マニアも大いに気になるところです。
 かのスピルバーグも自作品をDVD化する際はdts音声化が絶対条件であると語ったと伝えられており、両者の対抗意識はいや増すばかりであります。

 補足* ドルビー研究所も劇場でのDTSの台頭をただ指をくわえて静観するワケもなく、ルーカス・フィルムとの共同開発で新たに 『ドルビー・デジタル・サラウンド・EX 』という規格を発表しました。

 この規格の特徴は、サラウンド・チャンネルを3Ch(サラウンドL、R、マトリックスで作るC。合計で6.1 Ch)にしている点で、'99年夏公開の『スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス』で初めてお披露目されました。ドルビー・サラウンド・システムを世界的に普及させたのが『スター・ウォーズ』だったことを考えると、ドルビー側の意気込みが伝わってまいります。

 補足2* DDS・EXに対抗してdtsからもサラウンドを3Ch化した、『dts−ES』が発表されました。これも『スターウォーズ Ep1』の全米公開に合わせて初めてお披露目されたが、ES音声での国内公開があったかは、現時点では不明です。ですが、DDS−EXもdts−ESも 将来的にはかなり普及して行くと思われます。


 個人的には「いいかげんにしろ」という気がしないでもないのですが、ヤマハのDSP−AX1(8チャンネル・アンプ、99/12/16発売。\350,000)にAVアンプとしては初めて、DDS−EX(ドルビー・デジタル・マトリックス・6.1Ch)とDTS−ESに対応したDSP回路が搭載されました。尚、肝心のソフトは、北米盤でEXでのリミックス盤が数枚発売された程度ですが、通常の 5.1Ch収録のソフトでも多少の効果はあるようです。



THX 『スター・ウォーズ』シリーズのジョージ・ルーカスが提唱する、THXシアター、THX・LD、THX・DVD、THXビデオと云う言葉は、映画ファンなら1度はお聞きになっていると思います。

 劇場でのTHXとは、特定の音響規格を指す言葉ではなく、ドルビー・デジタル、DDS・EX、dts等、映画製作会社のサウンド・ステージ(監督、音楽監督、効果音担当者、全ての音の配置を決定するサウンド・デザイナーなどが最終的なミックス・ダウンを行う小シアター)で決定されたオリジナルの音響を、劇場で忠実に再現する為の(主にハード面での)子細な取り決めを意味する言葉であります。

 具体的に云うと、劇場内の残響時間やエアコン・ノイズなどの静ひつ性、使用する推奨スピーカー(JBLやエレクトロボイス等)、スクリーンを通る事で聴こえ難くなる高域周波数域の補足修正、各種の映画音響規格に対応したデコーダー、快適な鑑賞の為に必要な椅子などの設備面、と、多岐に渡る細かな条件をクリアーし、尚かつ、ルーカス・フィルム社側の検査・認定を経て、初めて「THXシアター」を名乗れる様になります。

 アメリカでのTHX信仰は想像以上で、興行主達に多額の投資を強要するにもかかわらず、全米のTHXシアター数は年々増え続けています。

 一方、家庭用AVソフトのTHXは、「ルーカス・フィルムが厳密な基準のもとに監修したマスター・テープを使用した」ソフトを指します。

 この『厳密な基準のもと監修』とは、「出来る限り、オリジナル・ネガプリントから世代の近いプリントを使用して、テレシネ、または、デジタル・オーサリングする」「オリジナルのサウンド・クォリティを出来るだけ忠実に記録する」「スクリーンを通過する際に減退する高域周波数を強調したシアター仕様のイコライジングを補正し直し、家庭用のAVシステム用にフラットに調整する」などの諸条件を意味します。
 つまり、THXマークを冠したソフトを見たら、高画質・高音質ソフトである証と受け取ってよい、ということです。(しかし、実際にはこれがTHXディスク?と、首を傾げたくなるソフトもあるのですが...)

 家庭用のTHX・AVシステムも発売されています。アメリカでは、THXシステム=高級機のイメージが強いらしいですが、正式なTHXシステムには、ルーカス・フィルムの認定を受けた特定の5.1ChスピーカーやAVアンプが必要な為、日本ではあまり普及していないのが現状です。しかし、最近ではもっと凡庸性を高くした、THX ULTRA、より簡易型の THX SELECTなどの規格も登場しています。

 THX・AVシステムを採用している国内メーカーとしては、パナソニックやデンオン、パイオニアなどがあります。

* 因みに「THX」の名称ですが、これはルーカスの長編劇映画の処女作、『THX-1138』というSF映画のタイトルに由来しています。

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