ガス・バン・サントの「サイコ」


ガス・バン・サントの「サイコ」
  岩窟王  1999/10/01


輸入盤のDVDが届き、リメイク版「サイコ」を観ました。
う〜ん...はっきり言ってヒッチの「サイコ」を観た方は
観るまでもないそっくりさ。

映画ファンなら一度は
過去の名作や傑作を今リメイクしたら、どんなキャスティング
をするか?とか、
白黒作品を現在の技術でリメイクしたらどんな映像になるか?
などと考えたことがあると思います。
これをストレートにやってしまったのが、この作品です。
その意味ではちょっと羨ましい気もしますね。(^-^)


メイキングによると、ガス・バン・サント監督も初めはこの
企画が実現するとは思っていなかったようですが、
「グッド・ウィル・ハンティング」が成功したことにより
ユニバーサルの承認を得られたのだと言います。


ヒッチの
「サイコ」はまぎれもなく傑作ですから
そっくりにリメイクしたこの作品も高い評価を得て
当然ですが、実際は悪評・不評がほとんどでした。
僕もいくつか、不満点がありました。


まず、基本的にはソール・バスのオープニング・デザイン
から始まって、ヒッチの登場シーン(デジタル処理により色付)、
セリフ、音楽、カットの構図から編集もほとんど同じなのですが、
やはり演出家としてのサガなのか、
よりにもよって、
有名なシャワーシーンを含む2回の殺人シーンに
サブリミナル効果の様な短いイメージ・カットが
数カット、挿入されています。

その意図が意味不明で中途半端な印象です。
これでは偉大なオリジナルへの冒涜行為と取られても
仕方ありません。

それに全体的に、被写体を切り取った構図のサイズが
微妙に違って撮影されています。
これが、オリジナルを見慣れた僕を落ち着かない気分
にさせます。


設定を現代にしたこともまったく意図が不明。
4万ドルを40万ドルに変えた以外には
衣装などを含めて60年代の匂いしかしないし、
オリジナルと同じように、
スクリーンプロセス(野外シーンをスタジオ内で撮影する
古典的手法。 スクリーンに別撮りした外の風景などを
投影しつつ、その手前に俳優や車などを配置して一緒に
撮影する)を多用していたりします。

そもそも設定が今日性ゼロなのに、舞台を98年にしても
仕方がないではありませんか。
男女の関係も意識も、犯罪や警官の質もまったく変わって
しまっているというのに....。

ベイツ・モーテルのネオン・サインが安っぽく変わって
しまっているのも納得がいきません。
あの看板が無いベイツ・モーテルなんて...。


キャスティングについては、甘さや繊細さが薄いものの
ビンス・ボーンのノーマンは意外に良かったですが、
マリオン役のアン・ヘッチはまったくのミスキャストです。
ファニーフェイスで肉体的にもセクシーでない彼女では、
ノーマンの狂気を誘発する起爆材としての説得力がありません。

探偵役のウイリアム・H・メイシーも線が細く気弱そうで、
有能で押しの強い私立探偵にはとても見えません。


でも、感心した変更点もありました。
ノーマンの趣味の部屋となっている地下室のセットと
ラストの沼のロケーションです。


やすさんのBBSで風さんも触れていましたが、
遠くにハイウェイを行き交う車が見えて、モーテルの立地を
考えるととてもリアルです。
CG処理かとも思いましたが、メイキングにも写っていました
ので、場所を決めてから、逆に沼の方を作ったようですね。



*結論
凡庸な芸術家が天才の模写をしても、質の低い贋作にしか
ならないのね。
ヒッチコックの偉大さを再確認出来るという点では、
観る価値があるかもしれません。

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