「雨あがる」


「雨あがる」を観る   岩窟王  2000/02/24


 「雨あがる」 85点

 監督:小泉堯史 脚本:黒澤明(遺稿) 音楽:佐藤勝(遺作)
 製作:原正人、黒澤久雄 撮影:上田正治 撮影協力:斎藤孝雄
 美術:村木与四郎 照明:佐野武治 衣装:黒澤和子
 ほか、黒澤組のスタッフ
 出演:寺尾 聰、宮崎美子、三船史郎、原田美枝子、井川比佐志、
 村松達雄、吉岡秀隆、壇ふみ、仲代達也、
 ほか、黒澤組のキャスト



 この作品は、黒澤監督が京都の旅館で執筆し、
その完成間際に事故にあい、病闘生活の後
惜しくも亡くなるまでそのままにになっていた
遺稿脚本を元に、
監督の長男である久雄氏とプロデューサーの原正人氏を始め
黒澤組のスタッフ&キャストが
監督に捧げる意味で製作したものです。

 監督は、久雄氏とスタッフのたっての要望で、
「影武者」の助監督以来、公私にわたって監督を補佐し続けた
小泉堯史氏が務めました。
長編劇映画としては、これが初監督作品となります。

 原作は監督の愛した山本周五郎の「おごそかな渇き」
この世の無情感を描いた
「乱」の世界とは対局にある、
「赤ひげ」以来の黒澤ヒューマニズム映画の復活であります。


 監督のファンである僕のことですから、
多少あまい点になってしまうのは仕方ないのですが、
一抹の不安を払拭する秀作になっていました。

 小泉監督の演出は、黒澤監督の過去の作品をホウフツと
させる手堅いものしたが、それでいながら
只の模倣にはなっていない、実に見事な初監督ぶりでした。

 物静かで控えめという小泉監督の性格は
ちゃんと作品に表れてくるもので、
黒澤時代劇に観られるダイナミズムよりむしろ、
細やかな心理描写の方に手腕を発揮していたように思います。


びっくりしたのが、主演の寺尾聰がとても良かったことです。
三船敏郎の三十郎のような悪ぶったスーパーヒーローではなく、
人の良さ丸出しの浪人で、愛妻家の善良な剣豪という
一風変わった新しいヒーロー像を見事に体現していて、
驚きました。

やはり山本周五郎の原作を脚色した、
「椿三十郎」の元になった没脚本「日々平安」の主人公
(利発ではあるが人情家で道徳的な為、人には見下されている武士)
と同じタイプの人物像です。

夫をひたすら支える宮崎美子の奥方もとても良くて驚きました。
現在の日本にこんな良妻がいるとはとても思えませんが、
お城に招かれ、着ていくものがないと困っている夫に、
黙って裃(かみしも)を差し出す場面にはジーンとしてしまいました。

これは
「グレン・ミラー物語」
グレン(ジェームズ・スチューワート)が演奏旅行の資金を
どうしようか?と仲間と話し合っている時に、
黙って貯めていたお金を差し出す奥さん(ジューン・アリスン
に並ぶ、映画史に残る良妻ぶりです。(笑)

豪放磊落な殿様を演じる三船史郎氏は、
三船敏郎の長男で現三船プロダクション社長ですが、
俳優としては28年ぶりの出演ということです。
これが、声から仕草から若い頃の親父さんそっくり!
ちょっと一本調子の台詞までそっくりでしたが、(笑)
型にハマッタ事を嫌う、名君を生き生きと演じていました。
これはハマリ役です。

黒澤監督のファンはもちろん、
邦画好き、時代劇好きには絶対のオススメであります。
晴れ晴れとした夫婦愛がテーマということもあり、
客席にはご年輩のご夫妻もお見掛けしました。
皆さんのご両親にもオススメですよぉ!

この作品が成功したことにより、
まだ数本ある監督の遺稿脚本の映画化も実現しそうです。
もちろん小泉監督作品になるとのことで、
たいへん楽しみです。

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